汽車組・新幹線組の7月【園だより(2007/08)から】
(文:篠原)
色々なことがありました。単に僕がこの子達のことを前より知ってきたからというのもあるでしょうが、みんな以前とは別人のようです。また、月齢の低い子は幼く、高い子はしっかりと。見事なまでにそうなっているように見えます。(気になることもありますが)
<汽車組>
あっくんは、物分りが良すぎると言われます。怒れない、と。が、この前汽車組の四人で石山に行ったとき、しゅうじくんがちょっとしたことでぞうりが脱げ、その脱げるきっかけとしてわずかにぶつかったらしいあっくんに、しゅうじくんの口癖なのですが、「やめてー!!」と言いました。すると、「や、なにもしてない。(少し間を置いて)・・・何もしてないのに何で言うの?」。怒ってるわけではなく、落ち着き払った様子。しかし、しっかりと意志主張してます。他の子なら「何もしてないよー!!」「そんなん言わんといてー!!」と怒鳴り返すか、もしくは押し黙るところでしょう。さすが、汽車組最年長と言えるのかもしれません。
そんなあっくんは、いつも面白いことを考えています。大人に話しかけることが多いのが気にかかりますが、それも、面白さに貪欲だからでしょう。ご飯中でも何でも、思いつくと即歌ったり踊ったり、行動してしまうほどです。一日中、楽しむ方法を考えています。「人形劇」と称するアドリブダンス・歌(みんなに握手して回って終わります)はあっくんの十八番です。
あきひろくんは二番目に大きい。彼も、笑わせることのできる子です。テラスで重ねた机を使ってみんなで遊んでいて、どういう流れか、冗談でゆういちろうくんが「あきひろには貸したらへーん」と言った時、なんと返したか。「そんなん言わんといてー」でもなく、「だめなんだよー」でもなく。頭を横にブルブル高速で振って、変な顔を見せた。ゆういちろうくん、思わず笑った。他の子にはないぶっ飛んだ発想です。また、最近、年長に付いて遠出することが多いのもあってか、とても生き生きとしています。お母さんと別れる時も大泣きしなくなったし、近いうちに「くさぶえ行きたくない」と言わなくなるでしょう。
りかちゃんも、最近頑張っています。ある日、ズボンがもう服箱にありませんでした。僕が近くを通ると「ズボンない」と言ってきました。僕が「友達だれ?」と言うと、「ゆみこちゃん」と。「じゃあ貸してって言っておいで」。話してるうちに、徐々に涙ぐんできました(いつもそうです。何かがないだけ、椅子を取られただけでは泣きません。行動する必要が出てきて泣くのです)。しかし頑張って、ゆみこちゃんの所に行き、「ズボン貸して」と言えた。よく分かっていないようなゆみこちゃん。「ズボンないから貸して」と言葉を付け加えるりかちゃん。お見事!!しかし、ゆみこちゃんは「・・・いや」と(笑)。途端、りかちゃんは大泣き・・・しそうになったが、しゅうじくんが「しゅうじくんあるよ!」と貸してくれ、一件落着。
しんいちくんも、大きく成長。ちょうど7月頭くらいから、リズムで、汽車組が前に出るとき以外は一緒に座っているように。汽車組としての自覚です。また、はじめに「きんきんきれいな夏の空・・・」の歌を歌うとき、該当箇所がくるよりはるか前から、口に手を当て「オーー!!」ととても大きな声をあげます。他の箇所では一切声を出さないのが、自分で、「『あ』とか『お』しか言えないから」と分かってあきらめているようで気にはなりますが、とりあえずとても楽しそうです。またある日の昼食時、なぜか流れでみんなが次々にしんいちくんに冗談を言うことに。笑ったり見つめたり、今までのように聞いていたが、「しんいち、これ(=うどん)へびだよ」「へびが給食」そして、「しんいち、へび食べて」と言った時には、即座に首を横に振りました。僕が今まで見落としていただけかもしれませんが、みんなに働きかけられたことに対して、「面白そう」「みんなが楽しそうだから笑う」という以外に、はじめてはっきりとコミュニケーションした気がしました。今後、より関係が深まっていくように思えました。
しゅうじくんは、言葉が達者。でも、下から二番目に小さい。そのまだ幼い思考スピードの割にいっぱい入っている言葉に翻弄されているのか、話し始めに何度もどもることが結構あります。また、「あれ、お父さんが働いてる一宮タワーだよ」「れいくんが行ってる学校だよ」などのことを間を置いて繰り返すなど、とにかく、言葉で活動しようとしている。何ヶ月か経ち、じきに言葉に追いついてくると、あっくんやあきひろくんといい組み合わせになりそうです。とても楽しみです。現時点でも、その勢いのよさから誰のところにでも入って行き、みんなと接点を持っています。
そしてゆみこちゃん。やはり、3月生まれ。ダントツに幼い印象です。また、7月頭くらいから、リズムなどの時に、「年齢順」に並ぶということになりました。それ以来、「ゆみこちゃんは一番小さいんだよ」とことあるごとにみんなの口から聞かれるようになった。みんながわずかながら気を使うようになった(しゅうじくん、しんいちくんはそんなに離れてないので変わりませんが)。名実ともに、一番幼くなったわけです。が、しかし、りかちゃんとの関係はまた別です。、一時期(今でもたまに)「ゆうちゃん」「りんりん」と呼び合っていた。どうやらゆみこちゃんが始めたことのようです。ゆみこちゃんが主導の部分も多くあるのです。また前述のように、そんなに仲の良いりかちゃんが、泣きながら「ズボン貸して」と来た時に、さらっと「いや」と言ったり、二人の関係はとても不思議です。ゆみこちゃんの幼さゆえか、りかちゃんの合わせられる性格ゆえか。
<新幹線組>
けいたくん。園内一の暴れん坊、動物のようと言われていましたが、だんだん変わってきました。今や、一番安定しているのではないかと思います。ゆうやくんと、そしてあっくんとあきひろくんと、月齢が近いせいかこの4人が、時により組み合わせを変えて遊んでいるところを7月前半はよく見ました。ゆうやくんは家に遊びにも来た。そんな中、元気いっぱいはそのまま、友達との関係ができてきて、強い。休みの日のことになりますが、昔遊びの会にお父さんと来ていたとき、何度やってもできないコマ回し、僕が「もう嫌になって投げ出すやろう」と思ってからも、何度も何度も、本当に何度も辛抱強くひもを巻きつけてチャレンジしていて、改めてその力強さを感じました。
けいたくんの家に「行っていい?」と言ったのはゆうやくんです。今まで、うそ笑いが時に見られることが実は気になっていたのですが、そんな風に月齢の近い友達ができてきて、等身大のまま過ごせるように若干なってきたかもしれません。例えばある日、年長とゆうやくんだけで車で2時間、プラネタリウムを見に行き、一日過ごしましたが、借りてきた猫のようでした。おそらく、家にいる時と同じく、みんなゆうやくんよりウワテだったからです。しかし、普段新幹線組らと遊んでいる時は、「~やないよ!!」「ゆうやの机もってかんといてよ!」など声を挙げ、やり合っています。同じレベルで、必死になって遊べているそんな今は、怒ったり笑ったり、いつも本気で、とてもいいと思います。器用な子で、おやつの時、みんなが「早くおいでよ」と呼ばれてどんどん食べに行っている時、ゆうやくんは一人本を見ていて、ズボンだけパジャマのままだった。そして気づいて焦りだした。急いで着替えようとしたちょうどそのタイミングで、僕が「それまだパジャマ?(と思ったが、さっきと違う服のようにもちらっと感じたので)・・・いや、もう服に着替えたの?」と訊いてしまうと、ちょっと考え、「・・・うん(=着替えた)」と言った。そしてそのままおやつに行こうとした。でも、やっぱりそれパジャマでしょう!ためしに汚れ物袋を見ると、ズボンはひとつも入ってなかった・・・(笑)。そんな器用さも、子どもたちの間では通じないから、いいのです。
ゆういちろうくん。パワフルですが、かまってほしい。一線に立って遊んでいるが、ちょっとした怪我、言い争いで泣いてしまう。先月に続いて絵本を借りる時、ゆういちろうくんが持ったところ、他にも借りたい人がいっぱいいて、例のごとく、ジャンケンで決めることに。そして、負けちゃった。でも、抱え込み、「ゆういちろうが借りる・・・」と困ったような顔。結果、そんな無茶は通らず、泣いてしまった。また、昼寝の時、場所を変えたり、友達と話したり、なかなか寝ない。僕が「寝るんだよ?」と言いに行くと、「知っとるよ!」と一点張り。でも吉岡さんが、「あんたもう寝るんよ!」と行くと「吉岡、今日から吉岡は『前編後編』だよ!」「えっ?何よそれは?」「じゅんぺんこーへんなの!!(笑)」「じゅんぺい?(笑)」。そしてみんな大騒ぎ。よく分かりませんが、じゃれあうと大喜びのようです。起きるとき、夢でうなされてるのか泣きながら起きることも二回あり、不安定になってる部分もあるようですが、吉岡さんがいることでだいぶ救われているようです。
けんちゃん。面白いことが好きで、よく話し、笑っている。
[例1] けんちゃん「今日うちで雪降ったよ」
しゅうじくん「うちでも降ったよ」←負けず嫌い?
けんちゃん「でも積もらなかったよ」
しゅうじくん「・・・ちょっとだけ?」←?
[例2] ゆうや「しのっち、今、名前なに?」←?
けんちゃん「お名前教えてくださいな~♪」
しゅうじ「・・・お名前教えてくださいな~♪」
けんちゃん「な~~♪」・・・走り回る
しゅうじ「な~~♪」・・・走り回る
[例3] しゅうじくん「(僕に対し)これ、貸したげなーい」
しのっち「え~、貸してよ~」
しゅうじくん「貸したげな~い」
けんちゃん、やってきて「僕に貸して?」
しゅうじくん「いいよ」
そしてけんちゃん、それを僕のところに持ってきて、「はい」とくれた。しゅうじくん呆然。けんちゃん、楽しそうに笑う。
こんな調子です。他の子もよく分からないことを言ってますが、けんちゃんの場合はわざと言っている。これはけんちゃんといっちゃん以外にはちょっと難しいことです。しかし、弱い部分もある。誰でもあるように、お友達にケガさせそうなことをしてしまった時、「けんちゃん、それは危ないからダメだよ」と僕が言いに行くと、絶対に目を合わせない。最初は返事をしない。困った、少し泣きそうな顔をする。楽しいことが大好きな反面、注意されるのがすごく嫌なようです。また、一人ずつ前に出て歌うとき、他の子はさっそうと前に出て歌っていても、けんちゃんとゆういちろうくんだけは歌わず、涙ぐんでしまったり、そんなところもあります。
いっちゃんにも弱い部分があります。とてもしっかりしているように僕は思っていたのですが、ある日、お母さんと別れる時大泣きしました。僕は残念ながら赤ちゃん達を散歩させていてその場面を一切見ていなかったのですが、前田さんによると、赤ちゃんのするようなかんしゃくを起こす泣き方だったそうです。普段しっかり、大人の「机、片付けるよ~」「ご飯の用意するよ~」などの声に「はいよ~!」と反応して来て、すると他の子もいっちゃんにつられて来て、みんなで一緒に楽しそうにやってくれてたのですが。どこかで優等生的にしようと頑張ってしまっているのかもしれません。とは言え、他の子はやはり、みんなを引っ張っていく楽しい人気者としていっちゃんを見ていると思います。
こんな調子で、楽しい毎日を過ごしています。関係が深まってきたための、自然な毎日。プールに入れる時は、よりすっきりした顔をしていました。雨で入れず、外にも出れない日が続き、その間はちょっとぐずぐずしましたが、それが続くうちに、部屋の中でも思いっきり楽しめるようになりました。強いのです。やはり外で遊ぶ素晴らしさにはかなわないと思いますが、梅雨が明けた今も外に出ることが減ってしまっているのが残念ではあります。が、それもまたすぐ変わるでしょう。
夏本番、8月はどんな風に過ごすのでしょう。どんな経験をするのでしょう。どんな成長を見せるのでしょう。楽しみです。