右脳から左脳へバトンを渡すとき(2006.1.15)

右脳から左脳へバトンを渡すとき~マルシャーク作「森は生きている」を観て~

こんにゃく座のオペラ「森は生きている」の歌は楽しい。
舞台が抽象的で音楽中心の劇だから、歌の楽しさに気持ちがいってしまう。
みんなで遊ぶ「森は生きている」ごっこは全ての年齢のどの発達段階にある子も楽しめる。
特に「そりの歌」は最高だ。

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『こんにゃく座』と『劇団仲間』の両方がこの東海地方にもやってきた頃は両方観に行ったものだ。
両方ともそれぞれに楽しく面白かった。
 『こんにゃく座』の生ピアノと歌声の素晴らしさ、舞台は抽象的で幼児期の子どもにはちょっと理解するには難しい、と言われていた。
 『劇団仲間』は新劇と言われるジャンルだけに舞台装置が美しく、季節が一瞬にして変わるところは見ごたえがある。登場人物の衣装もきれいで華やかだ。出てくる動物、ウサギやリス,狼やカラスや熊の着ぐるみもとてもリアルで子ども達は大喜びだ。何より視覚に訴える。

 こんにゃく座が聴覚なら、劇団仲間は視覚というふうに言えるだろう。
 1月5日、東京新宿、紀伊国屋サザンシアターでの、劇団仲間による「森は生きている」の千秋楽を観に行った。年長児ふたりと一緒に。
 「森は生きている」の絵本を読み、林光の歌もほとんど知っている。私にとっては数年ぶりだったけれど、内容の濃さに驚き、感動した。それは、「言葉―せりふ」が生きていた。言葉のもつ意味が確実に意味を持って語られていた。ただの言葉、ただのせりふではなく。みなしごの境遇の悲しさや、女王の後半のせりふの一言一言の重みが6歳という年齢の子どもの脳に確かに届いたと思った。それは、主役であるみなしごや女王に限らず、年老いたカラスやウサギ、リスそれぞれの1月から12月までの月の精の役割や、先生や老兵士たちの役作りが、役と役者個人とのあいだの対話がしっかりと成されていなければ、今回のような、「森は生きている」に出会えなかっただろう。

 絵本や歌で「森は生きている」の内容は知っている子ども達、でもそれをどんなふうに理解し、感じていたのだろうか・・・。

 脳の発達は小脳→中脳→大脳、大脳は右脳→左脳と発達するらしい。(右脳は主に絵や音、左脳は文字・数字・言葉をつかさどると言われている。)このことを私たちは実践をもって知っている。それはいろいろな育ちの遅さを持った子たちが教えてくれた。誤った早期教育はこの順を取り違えている。認識が遅く、言葉の出ない子でもメロディは口ずさむ。でも言葉の意味を理解することは難しい。
 今回の「森は生きている」を観た子どもは、この演劇を通して、はっきりと「言葉のもつ意味」の理解の仕方がわかったと思う。右脳から左脳へのバトンの渡し方としては、最高のステージだったと思う。

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